いちごとカルーア【完】



言おうとしたところで、一歩踏みとどまって唇を噛んだ。


人気者だった崇哉にふさわしい女の子になりたくて、私はずっと緊張したまま彼と付き合っていた、あの日々。


本当はガサツだし、甘いものもそんなに好きじゃないし、可愛らしいものよりシンプルなのが好きな私と、彼の前の私は大分違ったみたいだ。


なんで忘れていたんだろう。


昨晩、緊張しながら話す言葉を頭で必死に考え、お酒が弱いフリをしてカルーアミルクばかり頼んでいた自分が、6年前の自分と重なってなんだか笑えてきた。


私って、この人の前じゃきっと私らしくいられない人なんだ。


妙に他人事のように導き出された結論が、すとっと心の中に落ちた。



「なに?」

「……なんでもない」



ずっと忘れられなかった人。


昨日だって、今朝だってやっぱり好きだって思ったはずなのに。


高校時代、執着していた気持ちが溶けていくような感じ、新しい恋が探せそうな予感がした。


次付き合う人は、自分が自然体でいれる人。そんな人がいいな。



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