熱愛系エリートに捕まりました
男性も力強く頷いたのを見て、被害者女性は意を決したように表情を改め、「お願いします」と頭を下げた。

その直後に駅に着き、雪崩れるようにホームに出る人混みの中に紛れ、隙をついて逃げ出そうとする痴漢を仲村と呼ばれた男性が拘束しながら、彼女たちは姿を消した。

俺はその一部始終を、結局一言も発することなく、足を一歩動かすこともなく、ただ見ていただけだった。


ものの数分後には大手町に着いて、B.C.square TOKYOを目指して歩きながら、俺は激しく自己嫌悪していた。


生きるためには働かなければならない。

そして、よりよい人生のために、やりがいのある仕事をしたい。

そうして目指したのが、今の職場、世界三大コンサルの1つであるメイリー&カンパニーだ。


でも、生きるために仕事を選んだはずなのに、気づけば仕事のために生活している。

目の前に理不尽に追い詰められた人がいても、仕事に遅れるからという理由で見て見ぬ振りで助けない。
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