熱愛系エリートに捕まりました
自分がそんな冷酷な人間に成り下がっていた事実に気づかされて、その場に崩れ落ちたくなった。


それに比べて、あの女性は……

自分が被害者でもないのに、俺と同じように痴漢行為に気づいて、でも俺とは違って行動を起こした。

痴漢を睨み、被害者女性を支えた。

味方になってくれる男性が一緒にいたとはいえ、立ち向かうには勇気が要っただろうに…


彼女は、若かったけど大学生だったのだろうか。それとも新卒?

どちらにしろ、俺が見失ったものを、見失ったことにすら気づかなかったものを、彼女が取り戻させてくれたのは確かだった。


自分に直接向けられたわけでもないのに、どうしてか彼女の瞳が忘れられない。

あの澄んだ眼差しが、脳裏に焼き付いて離れないのだ。

そのおかげで、錆びついた心が洗われてシャンと背筋が伸びる気がした。
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