熱愛系エリートに捕まりました
俺だって、彼女を知ったのは偶然同じ電車に乗り合わせたからに過ぎないのだし。

となるともう、出会いを意図するには何かしらの状況をでっち上げて───例えば、社員証を落として彼女が拾ってくれるように仕向けるとか───体のいいナンパをするくらいしか手段がない。

だけどそもそもの成功率が確約されていないし、状況を作ることに成功したって彼女にやんわり拒絶でもされてしまえば成立しないし、賭けとしてはあまりに無謀。


そうして結局また、トウコというらしい彼女のことを考えて悶々とした日々を二年も送る羽目になったのだが…

遂に祈りが届いたのか、それとも神が日々に忙殺されながらも彼女の面影が脳裏から消えない哀れな男に同情したのか、そのチャンスは唐突にやってきた。


社外で打ち合わせをした帰り、もう空はすっかり暗くなっている時間。

ビルやマンションが並ぶとくに何の変哲もない路地を歩いていたら、雑居ビルの一階テナントとしてオープンしている店を見つけた。
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