蛍が浮かぶ頃 【砂糖菓子より甘い恋2】
++++++++++

龍星はそこで話を止めた。

平気だと嘯いていた毬は、龍星の膝を枕にとっくに夢の世界へと誘われている。
龍星は無意識のうちに指先で、毬の髪をそっと撫でていた。

「すっかり遅くなったな」

「いや、構わんよ」

雅之はほろ酔い加減で答えた。

「結局、子供の霊はその家から追い出したのだが。
 首を絞めた犯人は見当がつかなかった。

 実のところ、もう一度犯人が来るまでそこで張ってみれば良いのだが……。
 正直言ってそんな気持ちには微塵もなれぬ」

龍星は珍しく本音を呟き、苦笑した。

「とはいえ、明日あの女が死んだと聞けばさすがに寝覚めが悪いからな。
 一応、式神を代わりに置いてきたよ。
 何もなければよいのだが」

「そうだな。
 何かあったらいつでも俺を呼んでくれ。
 深夜でも、早朝でも」

犯人が霊でなく、人であった場合、龍星よりも雅之の方が適任だった。
臆面なくそういうことを言ってくれる雅之のことを、龍星は心底好いていた。





< 9 / 95 >

この作品をシェア

pagetop