蛍が浮かぶ頃 【砂糖菓子より甘い恋2】
翌日から、鷹彰と緑は昔からの友達のように野山を駆け巡って遊んだ。

冷たい川のせせらぎを飲んでみたり、雨上がりに浮かぶ虹を捕まえようと全速力で走ってみたり。

おたまじゃくしを捕まえて脚が出るまで見ていると言っては、その直後、めだかの大群を見かけそちらの方に気を取られてみたり。

自由奔放に、そこで思いつく限りの遊びを楽しんだ。

ある夜、川で蛍を見つけたという大人に連れられて、二人で手をつないで大人と一緒にそれを見に行った。

「うわ!
 星がたくさん落ちてるっ」

驚いた緑ははしゃぎ声を上げる。

「違うよ、あれ。
 蛍っていう虫なんだ」

鷹彰は落ち着いた声で説明する。

「虫?
 あれが、虫?
 嘘だよ、そんなのっ」

緑は声をあげた。

「本当だって」

唇を尖らせる緑を見て、鷹彰はくすくす笑う。

「それとも、あれかな?
 死者の魂、とか」

「もぉ。鷹彰、それ最低っ」

緑は頬を膨らませる。

そんな二人の会話を気に留めることもなく、蛍はゆらりゆらりと闇夜に舞っていた。
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