蛍が浮かぶ頃 【砂糖菓子より甘い恋2】
落ち着こうと深呼吸を繰り返した毬は、ぬるくなったお茶を口にする。
「それで二度も倒れたのね、私」
事態を噛み締めるように言葉を紡ぐ。
毎晩、夜伽話として龍星から妖の話を聞いていた毬だが、いざ、自分の身に起こってみるとそれはすぐには受け入れがたいものだった。
……折角友達になれたのに。
一緒に大人になりたかったのに。
全ては夢物語に過ぎなかったと、現実は残酷に嘲笑うだけ。
格闘している毬を抱き寄せることも憚られ、龍星はその瞳に心配の色を宿してただと奥から見つめるだけで精一杯だった。
「毬」
重苦しい空気を破り、普段の声音で雅之に呼ばれて顔を向ける。
そこにあるのは、いつもの、実直な眼差し。
「俺は毬のこと、ずっと親友だと思ってるよ。
それともこんな年上の友達だと、不満かな」
胸の奥まで真っ直ぐに届く、温かい言葉。
どくどくと身体の中に流れ込んできて、冷えた体温を上げていく。
「そんなことないわ。
でも。
雅之は龍と仲良しだから、取ったりしては駄目かと思って」
「親友は恋人とは違うから、取ったり取られたりしない」
「私ともお酒飲んでお話してくれる?」
「当然。
今夜すぐにでも」
「ありがとう、雅之」
毬は、ぎこちなく、でも心からの微笑を浮かべた。
「それで二度も倒れたのね、私」
事態を噛み締めるように言葉を紡ぐ。
毎晩、夜伽話として龍星から妖の話を聞いていた毬だが、いざ、自分の身に起こってみるとそれはすぐには受け入れがたいものだった。
……折角友達になれたのに。
一緒に大人になりたかったのに。
全ては夢物語に過ぎなかったと、現実は残酷に嘲笑うだけ。
格闘している毬を抱き寄せることも憚られ、龍星はその瞳に心配の色を宿してただと奥から見つめるだけで精一杯だった。
「毬」
重苦しい空気を破り、普段の声音で雅之に呼ばれて顔を向ける。
そこにあるのは、いつもの、実直な眼差し。
「俺は毬のこと、ずっと親友だと思ってるよ。
それともこんな年上の友達だと、不満かな」
胸の奥まで真っ直ぐに届く、温かい言葉。
どくどくと身体の中に流れ込んできて、冷えた体温を上げていく。
「そんなことないわ。
でも。
雅之は龍と仲良しだから、取ったりしては駄目かと思って」
「親友は恋人とは違うから、取ったり取られたりしない」
「私ともお酒飲んでお話してくれる?」
「当然。
今夜すぐにでも」
「ありがとう、雅之」
毬は、ぎこちなく、でも心からの微笑を浮かべた。