蛍が浮かぶ頃 【砂糖菓子より甘い恋2】
――嵐山


――蛍


――「緑」


毬は今耳にした言葉を繋ぎあわせるが何も浮かんでこない。

浮かぶのは、甘い草の匂いと温かい太陽の日差し。
永遠に続くかのような、少年たちの愉しげな笑い声。


深い霞の中からそっと手が伸びてきた。
苦労を知らない滑らかな指。


『一緒に遊ぼう』


今、耳にしたのは無邪気な、でも目一杯背伸びした少年の声?
それとも、もう、知らないふりなど許されなくなった、大人のものなの?




「ねぇ、なんて名前?」


毬の質問に、男は意味ありげな笑いを浮かべた。
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