蛍が浮かぶ頃 【砂糖菓子より甘い恋2】
「雅之、顔を上げてよ。せっかく検非違使の格好してるのに、意味ないじゃん」
帝は馬から降りて、苦笑する。
その姿は、若く将来有望な貴族そのもので、御所の奥にいる時とは別人のように生き生きしていた。
考えてみれば、帝にお目通し適う人の方が圧倒的に少ないわけで、容姿を知られていないということは、お忍びには適している立場なのかもしれない。
「ああ、これは申し訳ございません。しかし帝、勝手にこのようなことをなさいますと……」
くどくどと説教をはじめる雅之に、帝は肩をすくめ龍星に視線を移した。
その腕の中にはぐったりした毬がいる。
「龍星、助けてよ」
「私は雅之の味方です」
龍星は涼しい顔で答えた。
「つれないなあ」
帝はわざとらしくため息をつく。
「龍星が検非違使を、っていうから来てやったのに」
「私は別の人を……」
雅之が慌てて口を挟む。
「あいつがあっさり帰ってきたから俺が出向いてやったんだ」
ありがたく思えと言わんばかりの態度の帝。
「しかし、事態は急変しました。やはり、妖(あやかし)が絡んでいましたので、お引き取り下さい」
「へえ、天下の龍星が誤診なんて珍しい」
帝は蔑むように言い放つ。
帝は馬から降りて、苦笑する。
その姿は、若く将来有望な貴族そのもので、御所の奥にいる時とは別人のように生き生きしていた。
考えてみれば、帝にお目通し適う人の方が圧倒的に少ないわけで、容姿を知られていないということは、お忍びには適している立場なのかもしれない。
「ああ、これは申し訳ございません。しかし帝、勝手にこのようなことをなさいますと……」
くどくどと説教をはじめる雅之に、帝は肩をすくめ龍星に視線を移した。
その腕の中にはぐったりした毬がいる。
「龍星、助けてよ」
「私は雅之の味方です」
龍星は涼しい顔で答えた。
「つれないなあ」
帝はわざとらしくため息をつく。
「龍星が検非違使を、っていうから来てやったのに」
「私は別の人を……」
雅之が慌てて口を挟む。
「あいつがあっさり帰ってきたから俺が出向いてやったんだ」
ありがたく思えと言わんばかりの態度の帝。
「しかし、事態は急変しました。やはり、妖(あやかし)が絡んでいましたので、お引き取り下さい」
「へえ、天下の龍星が誤診なんて珍しい」
帝は蔑むように言い放つ。