蛍が浮かぶ頃 【砂糖菓子より甘い恋2】
自分の心の内さえよく分からなくて、探るように、毬は言葉を紡ぐ。

「毬、ありがとう」

龍星は安堵の息を吐くと、触れるだけの軽い唇づけを落とした。
動揺する毬を軽々と抱き上げて寝室に向かう。

毬は腕の中でおとなしくしていた。
寝具の中に置くと、少し身体を震わせた。


柔らかい、陽に焼けた健康的な肌。
小動物を思わせる黒目がちな瞳。
ふっくらした紅い唇。
艶やかな黒髪。
強く抱き締めたら折れてしまいそうな華奢な身体。


今すぐここで欲望のまま、全てを奪ってしまいたい衝動に駆られる。
普段着物に隠されている白い肌に、幾つも紅い印を刻んで、自分だけのものにしてしまいたい。

自分の腕の中で快感に身を委ね、壊れんばかりに幾度も幾度も昇りつめ、本能のままに乱れ喚く姿を見てみたかった。


きっと、良い声で鳴いて、甘い吐息を洩らすだろう。身体の奥まで熱く溶け、彼女の熱がさらに龍星を熱くする。夜が明けるまでずっと、果てても果てても、尚、二人だけで深く繋がっていたい。


込み上げる征服欲。
身体の芯で欲望がたぎる。


「龍はまだ寝ないの?」

毬の声は、龍星を誘うように甘く響いた。
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