蛍が浮かぶ頃 【砂糖菓子より甘い恋2】
ふわり、と、毬は思わず笑みを溢す。

「勘違いですよ、きっと」

龍星は手のかかる子を抱え込んで、うんざりしているに違いないのだ。
時折気紛れに唇づけてはくれるけれど。

「なんと!そなたには自覚がないのか?」

キツネが目を丸くする。

「よく分からないけど。気が済んだのなら帰るわ」

毬はゆっくり後ずさる。


「その結界から出ないのは賢明だ。
賢いお嬢さんは嫌いではない。

龍星にまた会う日までに腕をあげるよう伝えておけ」

コーンとキツネがいななく。その声が緑の山にこだまし、薫風にさらわれた。


「あなたは龍星の敵なの?」


毬がキツネに問う。

キツネはにやりと笑いを残し、山の方へと駆けて行った。
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