蛍が浮かぶ頃 【砂糖菓子より甘い恋2】
不思議だ、と毬は思う。

独りで考えていた時はもう出口のない樹海に迷い込み、二度と出られない気がしたのに。
こうして龍星と話すだけで、霧が晴れたようにすっきりするのだから。

否。

もしかしたら、先程、龍星に抱き締められた辺りから、不安はごっそりと抜け落ちていたのかもしれない。


「ありがとう、龍星」


小さな声は確実に、彼の耳に届いた。
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