蛍が浮かぶ頃 【砂糖菓子より甘い恋2】
彼女の心が解(ほぐ)れたのを見届けて、龍星は改めて問う。
「九尾の妖狐(きゅうびのようこ)に会った?」
毬は首を捻る。
「尻尾は八つだったと思うのだけど」
ふう、と龍星は息を吐く。
「一本、俺が切り落とした」
「……?!」
毬は目を丸くした。
「俺の先祖に安倍晴明(あべのせいめい)って方がいてね。その方の親が狐だという話があるんだ」
あまりにも突拍子ない話だが、毬は黙って耳を傾ける。
「それが真実だからか、それともその話に付け込んでいるのか、物心がついた頃からあいつは近くにいて、ことあるごとに俺を敵対視してるんだ」
「強いのね」
「あるいは幻覚でそう思わされているだけなのかも。
蛍だって、普通の虫なんだよ」
龍星は飛び交う蛍の一匹をその手に掴んだ。
「まあ、綺麗」
毬は瞳を輝かせてそれを見つめた。
近くで見れば、それは確かに虫だった。
死人の魂でもなければ、星の欠片でもなく。
ぼう、と、淡い光を放って蛍は龍星の手を放れる。
「九尾の妖狐(きゅうびのようこ)に会った?」
毬は首を捻る。
「尻尾は八つだったと思うのだけど」
ふう、と龍星は息を吐く。
「一本、俺が切り落とした」
「……?!」
毬は目を丸くした。
「俺の先祖に安倍晴明(あべのせいめい)って方がいてね。その方の親が狐だという話があるんだ」
あまりにも突拍子ない話だが、毬は黙って耳を傾ける。
「それが真実だからか、それともその話に付け込んでいるのか、物心がついた頃からあいつは近くにいて、ことあるごとに俺を敵対視してるんだ」
「強いのね」
「あるいは幻覚でそう思わされているだけなのかも。
蛍だって、普通の虫なんだよ」
龍星は飛び交う蛍の一匹をその手に掴んだ。
「まあ、綺麗」
毬は瞳を輝かせてそれを見つめた。
近くで見れば、それは確かに虫だった。
死人の魂でもなければ、星の欠片でもなく。
ぼう、と、淡い光を放って蛍は龍星の手を放れる。