蛍が浮かぶ頃 【砂糖菓子より甘い恋2】

七の二 いつものところで

次の瞬間。


毬は龍星の屋敷の玄関にいた。
隣には手を繋いだままの龍星がいる。

「手品みたいだわ」

毬が目を丸くする。

「あの世界はこちらの世界の何処とも繋がっている。だから、わざわざ東河の畔に戻る必要はない」

「不思議ね」

毬は狐に摘まれた顔だ。


「そう。
不思議は不思議なまま置いておいた方が良いこともあるよ。
もうじき、雅之が酒を持ってくる」

「それも不思議?」

「いや。御台様からの依頼とはいえ、毬を御所に連れていってしまったお詫びに、さ」

「えー?
雅之は悪くないのに?」

首を傾げる毬に龍星が微笑む。


「そう伝えてやるといい。雅之も安心する」
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