食わずぎらいのそのあとに。
「田代さんに、夏から休み取るって言った?」
お皿を片付けてくれてから座り直して、タケルが聞いてくる。
「うん、昨日。妊娠してるのわかってるって聞いたから」
「俺には言いたくないのにな」
出た! タケルは時々こうやって田代さんのことを言う。片思いして振られたの何年前だと思ってるわけ? なんで田代さんを気にするのか全然わからない。
「仕事で迷惑かけるから、言わなくちゃと思っただけ。タケルにも話さなくちゃって考えてたけど……」
むっとして言い返したはずだったけど、結局しりすぼみになる。そもそも私が逃げてるせいだって、わかってる。
「一人で産んで育てようとか、まさか思ってないよね?」
昨日の優しかった態度から一転、今日は強気というか不機嫌そうな声で言う。
「思ってないです」
「俺昨日返事ももらえなかったけど、結婚するってことでいいんだよね?」
「はい」
「じゃあ、ちゃんと話そう。香が何考えてるのか、聞きたい」
だって話してもタケルが困ると思って…… いや、そうじゃない。自分が傷つきたくなかっただけか。
「なんで泣いたのか、全然わかんなくて。聞いたらまた泣くかなと思って」
私がまた何も言わなくて待ちきれなかったのか、ため息をつくようにタケルが言う。
「田代さんと話したって言うから、何考えてんだと思いますかって聞いた。そしたら、俺にわかるわけないだろだってさ。使えないよなあ、意外と」
今度は驚いて、何も言えなかった。そんなことを聞くなんて、田代さんとよっぽど信頼関係があるってことだ。前はそんな感じじゃなかった。
しかもプライドの高いタケルが、私のことを田代さんに相談するなんて。