食わずぎらいのそのあとに。
病院では、私も赤ちゃんも問題なしと言われた。

「ご主人、順調ですよ」

先生に声をかけられて、タケルは一瞬居心地悪そうに間を置いて「はい」と答えている。ご主人、には見えないよね。今日は休日仕様のラフな格好。若いなぁ、やっぱり。

待合室には、土曜だからか2人で来てる人が何人かいて、タケルは男女ともにチラチラと視線を受けていた。


外に出て2人きりになって歩き出しながら、いたわってみる。

「なんか大変だね」

「なに、人ごとみたいに。順調でよかったよ」

「そうじゃなくて、タケルが。いつもよりじろじろ見られてたね」

「俺? 見られてた?」

自覚がないんだ。慣れちゃってるのかな。二人で歩いててもたまに振り返られたりするけど、今日は特に見られてたのに。

私にも視線は飛んで来た。若くてかっこいい旦那さんで羨ましいとか思われてるんだろうな。実感がないけど、状況的には人が羨む立場にいるんだ、きっと今。


「一緒に来てくれてありがとう」

つないだ手に力を込めてみる。ふわりと優しく笑って「当たり前だろ。心配じゃん」と答えが来る。

今日は、最近のちょっと距離を置いてたタケルとはやっぱり違ってる。

タケルはきっと、覚悟を決めてくれた。

うん。

だから、タケルが後悔しないように。結婚してよかったって思ってくれるように、私も頑張ろう。


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