ビルに願いを。


「俺じゃない、杏が自分で作るんだよ。フェニックスのエンジニアなら1日でできる程度だよ」

月曜日、オフィスの丈はちょっと冷たい。

「私は違うから。本物のエンジニアじゃない。偽物だもん」

「じゃあ何? いつまでも俺のペットでいるつもり?」

ペット。人間以下だけど、まだそんな扱いなのか、今。

予想外の扱いの低さにちょっと傷つくけれど、悟られないようにする。置物よりはマシでしょ?




転職するにしたって、確かになにかしら自分で作るぐらいの実績がないとね。こういう遊びツールでいいのかは微妙だけど。

「私にもできると思う?」

「やる? やらない?」

励ましの言葉を期待した私に、無表情な声が返ってくる。

「やります。でも、わからないところは助けてください」

「OK。本番は4週間後? 間に合うよ」

淡々と、でも間に合うと言い切られる。丈が言うならきっとできる。信じてやるしかないでしょう。
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