ビルに願いを。
麻里子さん達にも企画を説明して、スタッフ側では予約手配などをしてもらった。
丈と相談して、何人かのエンジニアに声をかけて協力してもらうことにする。
ただのイベント用とはいえ、私が開発に関わることにいい顔をしていない人もいる。当たり前だ。この人たちは各国から集められた精鋭なんだから。
「杏が入ることで困る奴なんていない。人は人だろ」
そう言いながらも、丈も突然厳しくなった。わからないことがあって聞いても、調べろ、考えろ、とヒントぐらいしかくれない。
一日中、アプリのことを考えている。時には夢に見るぐらい。
助けられながら最初に出来上がった簡単なアプリにやっとOKが出る。
ホッとする間もなく、そんな必要ないのにデータを蓄積できるようにしろと言われる。人によってルートが変わるしくみも入れ込むことになる。
自分ではとても出来ない部分を、人に頼んで追加修正してもらっていく。
全部理解しろと丈に無理を言われながら、とにかくコードを読み、話を聞き、修正を依頼し続けた。
手伝ってもらった人たちとも、丈は熱心に話し合うようになってきた。今回は間に合わないけれどこうしたらとか、別のプロジェクトと連携させたらどうかとか。
これもフェニックスの一部として育ててもらえるものになるのかもしれない。私の手を離れて、本物のエンジニアたちの力で。
うん、本物のチーム、できるのかもしれない。
あの目に光が戻れば、社長に与えられた条件はクリアできる。
帰らせてあげなくちゃ。ずっと待っている人のところに。
頭では、そう思うんだけど。