ビルに願いを。


コーディング作業とは別に、写真を撮りに週末になると丈と2人で出掛けた。

一歩外に出ると、丈の厳しさは消えてリラックスしているのがわかる。

新しいのも古いのも、お互いに映画をかなりたくさん見ていることもわかってきた。ずっと仕事関係ばっかりの人かと思ってたのにな。

「DVDで?」

「古いのはね。ほとんどは映画館」

「引きこもりのくせに」

「好きでこんな暮らししてるわけじゃない」

調子に乗って言った言葉に、意外と拗ねたような答えが返ってきた。

「やさぐれてるね」

「今はそうでもないよ」

今度は笑うような声に顔を見ると、意味ありげに目を覗き込まれた。

からかわないでよ。

たくさんの映画を誰と見てきたのかはお互いに聞かなかった。彼はきっと映画館でケイティと。私はほとんど圭ちゃんがいない家で、1人で。




「疲れた?」

と聞いては丈は手を取る。疲れてるはずないのに、私も逆らわずに手を引かれつつ話した。

ダメだと頭でわかってても、気持ちが止まらなくなるのがわかってた。

相変わらずのバカだ。圭ちゃんにも麻里子さんにも警告されてるのに。

< 59 / 111 >

この作品をシェア

pagetop