ビルに願いを。

麻里子さんの合図で、少し離れて夜景の見える窓際のカウンタースツールに2人で腰を下ろした。

「パスポートを返すって言ってるみたいね」

「ちゃんと人と仕事してますもんね、最近」

「うるさく言わなくてもジョーが戻って来ると思ってるんでしょうね」

社長が? そうかな?

「あ、私がクビになりそうってまだ思ってるから?」

「そうじゃないでしょ」

麻里子さんが驚いたように私を見た。違うか。自意識過剰すぎるよね。イラ達といろいろやり始めたところだからだ。

「そうですよね、仕事ですよね」

「じゃなくて……単にあなたに会いたいだろうってこと」

「……ケイティの代わりですよ?」

向こうに帰ったら本物がいるじゃないか。キスされたぐらいで、私もさすがにそこまで自惚れてない。

何を言おうか迷うように麻里子さんが言い淀んだとき、丈と社長が近づいて来た。

「俺ちょっと休憩。疲れた」

「OK。でも逃げるなよ」

カウンターに寄りかかる丈の肩を軽く叩いて、社長は麻里子さんを連れてまた誰かを探しに行った。タフだなぁ。



そのまま2人でなんとなく窓から夜景を眺める。前にもこんなことがあったなって懐かしい気持ち。

「なに?」

「ハッカソンの時も疲れてたけど、今日はそれ以上みたい」

「あれは楽しいけど、こういうパーティはもっと疲れる」

「麻里子さんが驚いてた。こんなこともできるのかって」

ネクタイを少し緩めながら「やればできるよ、好きじゃないけど」と呟く。見とれてる自分に気づいて、目をそらした。
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