見上げれば、青

制服のブレザーを全く気崩すことはなく、初対面だけど真面目な人なのかなと感じた。

雰囲気的に、大人しいって言葉が似合いそうな。


「君の、名前は?」


澄んだ、少し低めの声。
そんな声が、火照った身体に染み込んでいく気がした。


「私は、水野あおいっていいます。2Gです」


水野さん、そう小さく呟いた鳴海くん。

彼の奥で容赦ない日差しを寄越す太陽が、眩しい。


そしてふと、私は自分が置かれてる状況を思い出した。


(授業サボって何してんだ、私)


屋上に寝そべって日光浴をして、気付いたら本当に眠りに落ちてて。
知らない男の子と話してるこの感じ、何なんだろう。


屋上の真ん中にぽつり、私と鳴海くん。

照りつける太陽に、生暖かい湿った空気。風はない。


目の前に座っている鳴海くんは、私と違ってあまり汗をかいていないよう。
私は先ほどから汗が止まらない。
汗ばんだうなじに、髪の毛が張り付く。


そのちょっとの違いが、
なんだかそれが、悔しく感じてしまった。

人間らしいことが、――汗をかくなんて当然なんだけど、その現象が自分だけに起きていることに溜め息が出そうになった。

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