見上げれば、青
この屋上は、人通りが比較的少ない旧校舎のもので。
特別教室ばかりが集まる旧校舎の屋上だからこそ、私はここを選んだ。
逃げ場所を探していてこの屋上の入り口を見つけたんだけど、入り口には鍵が掛かっていた。
持っていたヘアピンを少し曲げて、期待せずに鍵穴に差し込んで触っていたら。
なんと、鍵が開いたのだ。
鳴海くんは、いつもどうやって侵入してるんだろう。
次の授業…か。
「鳴海くんは次、出ないの?」
「うーん…。屋上の真ん中で、光合成するのも悪くないって思えてきた」
そう言って笑みを浮かべる。
鳴海くんは笑うと、目尻が少し下がった。
そこがなんだか可愛くて、私もちょっと笑った。
「4限サボったんだ?」
「、うん」
「嫌なことでもあったの?」
そう面と向かって言われると、何も返せない。
何となく空気を読んで触れないとか、そういうのはないらしい。
(嫌なこと、ねぇ)
5限開始のチャイムが聞こえたけど、鳴海くんがそのことを気にする様子はなかった。
これからの時間も私が屋上で過ごすと、そう認識したらしい。
実際に、今から立ち上がって教室に戻る元気は、残されてなかった。
できればじっとしていたいって気持ちが、私の中にはあった。
ジリジリと身が焦げる。
コンクリートを反射する熱が2人を容赦なく襲っていたけど、不思議とその場、――屋上の真ん中に居続けていた。
でも正直に言うと、さっきからずっと、頭がくらくらしている。
ちょっと、ヤバいかもしれない。
「――ねぇ、水野さん」
「うん?」
「本当言うと俺、ずっと前から水野さんのこと知ってた」
「、え?」
「ねぇ、……何か、あった?」