勿忘草~僕は君を忘れてしまった。それでも君は僕を愛してくれた~。
「要さん!お散歩にでも行きましょうか!」
明るく溌剌とした彩さんのいつもの声が穏やかな昼下がりのリビングダイニングキッチンに響き渡った。
僕はそれに自然と笑んでいた。
昨日の晩、彩さんは泣いた。
その時の彩さんは当然のことだがいつもの明るさと溌剌さを失っていた。
夜が明けて、いつもの時間に目が覚めて僕が思ったことは彩さんのことだった。
昨晩のように彩さんに元気がなかったらどうしよう・・・。
そんなことを僕は起きてすぐに思った。
僕はベッドからごそごそと抜け出すと手際悪く着替えを済ませ、顔を洗ってトイレへと行って嫌にドキドキしながらリビングダイニングキッチンへと続くドアを開いた。
ドアを開くとほんのりと甘い香りがした。
そのほんのりと甘い香りに僕のドキドキはほんの少しだけ落ち着かされた。
なんとなく『あ、大丈夫だ』と言う不確かな確信が芽生えたからだ。
案の定、僕のその不確かな確信は的中した。
『あ!要さん!おはようございます!』
僕に気づいた彩さんはいつもの明るく溌剌とした声で挨拶をしてくれて、陽だまりのような笑顔を僕へと向けてくれた。
嗚呼、よかった・・・。
僕は本当に安堵した。