夫の真実


【美保sights】

実家に帰り、私は、何か物足りない毎日を送っていた。

心のそこで、何かを求めている。

どこかに何かを置き忘れてきて、それが何かがわからない状態だ。

そろそろ1ヶ月が過ぎ、気分転換にも仕事を再開しようかと、母親と話していた。

医師も許可してくれた。そして、昼間だけ、マンションの部屋に戻ってみてはどうかと言われた。

母親も一緒に行くからと言われ、マンションへ行く。

ロック解除や、部屋の鍵の開け方は、体が覚えていた。やはり、1年近く住んでいたからだろう。

マンションの部屋は綺麗だった。

夫が掃除しているとは、思えなかった。きっと、家政婦でも、頼んでいるのだろう。

写真立てには、結婚式の写真やオーストラリアの写真が飾られていた。

この人が、私の夫。思い出そうとすると、頭痛がした。

「無理に思い出さないのよ。」

母親が言う。

写真から目を離し、隣の部屋に入る。

そこは、寝室。

体が自然に動く。クローゼットや鏡台へスムーズに移動できるのは、ここに慣れている証拠。

「お母さん、私の夫の名前は?」

ちょっと間があって、母は、決心したように、

「要さんよ。美保は、何か誤解しているけど、要さんはあなたと結婚しているの。あの写真の人が要さんよ。」
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