貪愛


この身体もベースは女であったはず

自分で自分の胸を触ってみるもののふくよかとは言い難い小さな膨らみである

む?これは女の身体なのか??

疑問を頭に浮かべていれば


「名前はそうだな…杞憂にしよう」


クスッと喉奥を震わせる男は僕の左頬を撫でてきた


「きゆう…?」

「そうだ。俺の刻印はここに刻もう。俺のものだとすぐにわかるように」


そう言って僕の頰を撫で撫でと撫でてくる男の温もりには素直に撫でられた


「杞憂という言葉の意味を知ってるか?杞憂」


既に杞憂と呼ばれることに特別違和感も無い

確かに新鮮ではあるが…考えてみれば特定の名前なんて貰ったこともないし


「知らん」


まあそれでも人の言語というものには詳しくない

理解し、話すことはできても掘り下げてその単語だけの意味なんかは特別関心もない



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