魅惑のプリズナー〜私は貴方に囚われた〜



元より彼は、ずっと私を姉だと思うために意識してきた。


そう思うように心がけてきたのだ。


私が止めてもいいものではないことは、よく理解しているつもりだった。


だから、私は。



「——うん。アサヒの気持ちは、よく分かっているよ。
だって私は…——」


——お姉ちゃん、だもんね?


そう言って笑うと、アサヒも悲痛な笑みを見せる。



きっと、今の私も似たような顔をしているに違いない。


だからアサヒは、私に倣ってしまったのだろう。



アサヒは、優しいから。


人の気持ちに敏感で。


誰よりも。何よりも。ずっとずっと。


優しいから——。





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