魅惑のプリズナー〜私は貴方に囚われた〜



その優しげな対応があるだけで、彼が私の言葉に耳を傾けてくれているということは分かっていたから。


アサヒが私から間接的に目を逸らしはしないことを分かっていたから。




彼は、アサヒは——安心できる、私だけの拠り所。


彼がいれば何もいらない。


アサヒがいれば私は、私でいられる。


「お願い、アサヒ」



だから私は、いつも。


常に、ただ一つを一心に願っている。



「——私を一人にしないで…」


今度もまた、何も返ってはこないと思った。


そう、思っていたけれど。




「しないよ。アリサを一人になんて絶対にしない。
だって…——」



ああ、彼は。




「アリサは僕の全てだからね」



本当に。


なんて、優しいんだろう。


悲しいのか、嬉しいのか。



水と見紛う何かが、瞳から一粒こぼれ落ちた。





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