魅惑のプリズナー〜私は貴方に囚われた〜



文章では伝わらない、重たい空気が確かに漂っているのだから仕方ないとでも言えようか。


「おい、何とか言え。俺の問題じゃねえんだぞこれは」


ここまで言われて、何も言えなくなっているということが分からないのか。


いや、分かっているからこそ急かしてくるのだろう。



つまりはこれもこの人なりの気遣いの一種……と、でも言えるのかもしれない。


あくまで、多分だけれど。


仕方なしに重たい口を開く。



「そこまで言わなくても、いいではないですか…」


言葉を発して気が付いた。


声に覇気がない。



ある程度のショックは受けているということなのか。


それとも元々、気が小さくなっていたのか。


どちらにせよ、シロウさんの同情を買う結果にはなったらしい。



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