君の星、僕の星
妄想の海で溺れている最中に声をかけられ、びくっと顔を上げる。


「俺、実は今日でこの店辞めるんです。」


意識が一気に現実に戻ってきた。



「……辞める?」

「ええ。実家も美容院なんですけど、母が体悪くしちゃって。俺が戻って継ぐ事になりました。随分悩んだんですけど」



はにかんだ笑顔の彼にお釣りを手渡される。



「瀬戸さんには長い間通ってもらって。本当にありがとうございました」

「そう。……残念ね」

「俺、」


彼は店の外まで見送りに出てくれた。



「最後のお客さんが瀬戸さんで良かったです。」


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