桜ノ蕾


ええっと、つまりまとめると。
私の名前は『桜』だけど、それは諱だから家族以外には言っちゃいけない。
名前を名乗るときは字の村上『蕾』と言わなくちゃいけない。
で、たぶんあいつが私を『ライ』と呼ぶのはあだ名。
と、いうことだろうか。



「えっと、じゃあ小夜ちゃんの『小夜』も字なの?」

「はい。諱は家族しか知りません」


この時代の名前は随分と複雑のようだ。

でも少しの間だけどここで生きる以上ここのルールは守らないと。


「わかった。蕾って呼ぶのは仕方ないことなのね」

「はい」


小夜ちゃんが微笑んだので私も同じように微笑む。


次にあいつに会ったときにちゃんと諱で呼んだこと謝らないとなぁ。
< 38 / 99 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop