桜ノ蕾


「何をしておるのだ」


低い声が聞こえた。


声のした方を見ると少し息が上がった殿がこちらを睨み付けていた。






助けに来てくれた……





私は目頭が熱くなってまた泣き出しそうになった。


「殿ですか」


男たちは焦った様子を全く見せず、ニヤニヤと彼を見ている。

殿が来たのだから普通は小夜ちゃんの様に焦るんじゃないだろうか。

さっきの殿が言っていた言葉が思い出した。
もしかしてこの人達は殿のことを飾り物だと思ってるの?


殿は男たちの態度に対して何かを言う訳でもなく黙ったまま近づいてきた。
俯いていて表情が分からない。



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