桜ノ蕾
「質問に答えろ。一体何をしているのだ?」
顔を上げた殿は私が諱を言ってしまった時に見せた冷たい目をしていた。
私に向けられている訳じゃ無いのに足がすくむ。
流石に男たちも顔が強ばっている。
「こ、この娘が泣いていたから皆で慰めようとしていただけですよ」
「そうなのか?」
殿は私の方を見て問いかける。
私は必死に首を振った。
それを見て彼は少しだけ微笑んで直ぐに男たちを睨んだ。
「どうやら嫌がっているようだが?」
「くっ」
男たちの表情は歪み、悔しそうに彼を見ている。
「ちっ。わかりました」
乱暴に彼の方に飛ばされ倒れそうになる。
でも、彼が受け止めてくれてこけずにすんだ。
「行こうぜ」
男たちはこちらを睨み付けたままその場を後にした。
すれ違ったときに一人が。
「陶様の傀儡のくせに」
と呟いたのが聞こえた。