桜ノ蕾

小夜ちゃんと分かれ林へ向かう。
長い廊下を歩いていると沢山の人とすれ違った。



1ヶ月経ち少し自分の置かれている状況が分かってきた。


どうやら私は周防国(しゅうぼうのくに)にある大内氏館(おおうちしやかた)というところに居るらしい。

周防国は現代で言う山口県に位置している。
前に殿にこの時代の地図を見せられた時は私の知っている日本地図とは似ても似つかないものでビックリした。


でも自分が何処に居るのか分かって少し安心できた。
少なくとも知っている所にいたんだ。



目の前の曲がり角を何も考えずに曲がろうとした。


「わっっ」


いきなり目の前に壁が現れ後退りする。
顔を上げて見ると見たことのない男の人がいた。
でも眩しくてよく顔が見えない。


「す、すみません」

「いえいえ、こちらこそ」


男はニコッと笑う。
その瞬間ドキッとした。



あ、あれ?
何でドキッとしてるの?



男の笑顔は何故か見ているだけで安心出来るようなものだった。
でも同時に私の中には違う感情沸き上がる。



これはそう、『懐かしさ』




「すみませんが急いでいますのでこれで」

「あ、はい! 本当にすみませんでした」


頭を下げると、男はまた笑って歩いていった。

私はそれをぼーっと眺める。

何で懐かしい何て思ったんだろう。
それにあの笑顔。何処かで見たことがあるような……


考えても心当たりがなく、ため息をついて私も歩きだした。


気のせい……だよね?


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