癒し恋~優しく包まれて~
弟は体を震わせて、掴んでいた手を離す。怒りに満ちていた瞳が潤んでいる。

こんな弟を見るのは初めてだった。父の言葉で弟が俊也さんに妬いているのがやっと分かった。

五歳年下の弟の体は私よりもずっと大きいのに、かわいいと思ってしまう。「かわいい」と言ったら、絶対怒るだろうけど、これはかわいいという言葉でしか表現できない。


「ゆうくん。お父さんの言う通り、お姉さんのことは俺が大事にするし、幸せにするよ。絶対に」

「好きにしたらいいよ。姉ちゃんが選んだ相手だし……」

「ゆう、待って!」


リビングを出ていく弟の後ろ姿が寂しそうに見えて、急いであとを追って階段を上がる。

部屋のドアは完全に閉まっていなく、少し開いていた。その隙間から覗くとベッドで伏せている姿が見える。


「ゆう、入るよ」


返事がなかったが、勝手に入ってベッドの前に座る。


「これ、お年玉。今日はありがとうね」


父に挨拶に行くことを直接伝える勇気がなくて、弟に話して伝えてもらっていた。
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