癒し恋~優しく包まれて~
入江さんは私の制止を無視して、ドライヤーを取りに行く。このくらい自然乾燥でいいと思うんだけど。


「ほら、ここにおいで」

「ここって、そこですか? いえ、そこはちょっと、さすがに遠慮しておきたいです」


入江さんは鏡の前の椅子に座り足を広げて、その間においでという。その小さな隙間にどう頑張っても私の大きなお尻がおさまるとは思えないので、お断りした。


「なに言ってるの? コンセントがここにあるんだから、ここで乾かすのがいいでしょ? ほら、きて」

「あの、コンセントの問題じゃなくて、その、入江さんが言うそこ……」


その場所を説明するだけでも恥ずかしくて、言い淀む。

片想い歴は長かったけど、男性とホテルで朝を迎えるとか密着するとか経験がないから、入江さんの言動や行動に動揺してばかりだ。

足の間に座るなんて、無理です。

言いたいことは何でも言える人間だったはずなのに、なんで言えないんだろう。

自分ではない自分にも戸惑う。


「俺のなに? もしかして、ここに座るのが恥ずかしいとか?」
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