癒し恋~優しく包まれて~
高鳴る鼓動を抑えようとカップを両手で握った。


「今日は会えないと思っていたから、柊花からメールをもらって嬉しかったよ。柊花の顔見たら、疲れもぶっ飛ぶしね」

「疲れているのに、わざわざ来てもらってありがとうございます」


お礼を言うと、肩に腕を回されて引き寄せられる。さらに密着し、心臓の動きはおさまるどころか早くなった。

どうしたら……そうだ! 肝心なことを忘れていた。聞きたいことがあるからと時間を作ってもらったのに、聞かなくては来てもらったことの意味がなくなる。

入江さんは空いている右手でネクタイを緩めながら、私の顔をじっと見る。

話すのを待っている?


「実は聞きたいことがあって……」

「聞きたいこと? なんでも聞いて。柊花が俺に興味を持ってくれるのは嬉しいね」

「土曜日の夜、駅のホームで入江さんを見かけたんですけど」

「俺を? 近くにいたのなら声掛けてくれたらよかったのに」

「一人だったら声を掛けれたけど、一人じゃなかったから」


なかなか核心に触れることが出来ない。まわりくどい聞き方ではなくて、ちゃんと聞きたいと思うのに。
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