癒し恋～優しく包まれて～
私の肩を叩いて、早足でフロアを出ていった。忙しそうだけど、今日は誰もが遅くても六時には帰らなくてはならない。

入江さんは急いで総務部に行ったけど、すぐに戻ってきた。もう誰もいなかったらしい。

このフロアも数人しか残っていない。課長も先ほど帰ったし、岩田くんも帰り支度を始めている。その様子を見て、パソコンをシャットダウンさせた。

チラッと入江さんを見ると同じくシャットダウンさせたようだった。


「三上さん、行こうか」

「はい」


声が掛かり、カバンを持って立ち上がる。


「あれ？ 二人ご一緒ですか？」

「ああ。岩田は真っ直ぐ帰るのか？」


私たちと同じタイミングでフロアを出た岩田くんはこの組み合わせに少し驚いているみたい。

だけど、特に突っ込んで聞くこともなく、聞かれたことにだけ答える。


「はい。明日に備えて早く寝ます」

「明日、マラソンだっけ？ がんばって」

「はい！ ありがとうございます！ お疲れさまでした！」


岩田くんは頭を下げると急ぎ足で階段を降りていった。彼はいつもエレベーターを使わず、階段を使っている。
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