癒し恋~優しく包まれて~
外に出て歩き出してすぐにないことを気付いたけど、もう一度戻る時間はなく諦めたのだった。

少しでも首もとをしめようとコートの衿を中央に寄せていると、ふわっと柔らかい布が首に巻かれる。

えっ?


「ほら、温かいだろ?」

「えっ、いえ、いいですよ! 入江さんが寒くなってしまいますよ」

「いいんだよ、柊花が風邪引いたら大変だからね」


入江さんが自分の首に巻いたマフラーを外して、私の首に巻き付けていた。確かに温かいけど、それでは申し訳ない。風邪を引いたら大変なのは彼もだ。

しかし、外して返そうとしても「いいから」とまた巻かれてしまい、申し訳ないと思いつつもありがたく借りることにした。

赤信号で立ち止まると、二人の手の甲が微かに触れる。何となく気恥ずかしくなって、そっと隣を見るとクスッと笑われる。

そして、甲ではではなく手のひらが合わさり、ぎゅっと握りしめられた。私も指を折り曲げて握りしめる。ドキドキするけど、嬉しくなった。

心の中は気になることだらけでモヤモヤしていたのに、触れあったことでつい忘れてしまう。
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