【完】もっとちょうだい。
「じゃあ今度、二人でどっか旅行しようか」

ってヤヨ、そのまんまの距離で言う。

「うん、行く」

そしたら今日よりもっと
長いことふたりきり?

それって、幸せすぎ。

「テーマパーク?温泉とか?」

どっちも捨てがたいけど、

「温泉いいなぁ。露天風呂つきのお部屋がいい」

「あーいいね」

とにかく
ふたりきりでいたいの、あたし。


「ヤヨちゃん、一緒にお風呂入ろっか」

ヤヨを見て、にやり。

そしたらヤヨってば

「え、まじ?」

ってそんな、喜ばないで。
冗談に決まってるでしょ。普通に。


「嘘だよ。絶対嫌だよ」

「……あ、そう……。……絶対とかどうなんだよ」

がっかりしすぎ、ヤヨ。

「お風呂は別でも、そのあといっぱい、しよ?」

キスしたり、
らぶらぶしようね。ヤヨちゃん。


「またお前はそういうこと言って……」


自転車を押してる片手を離して、
ヤヨ、あたしの髪の毛くしゃくしゃにする。


「もう俺学んでるし……半分は期待しないでおくわ」

「えぇ?なんで」

っていうか、何を?

「悪魔には一生わかんねぇだろうな」

「ねぇそれ、さっきも言ってたけど、天使の間違いじゃないの?」

「ないない」

ははってヤヨ、笑ってる。

「ひどい」って、
ちょっとむくれてみるよ。


だって、
「あたしは、ヤヨのこと王子様だと思ってるのに」

「王子?やば」


ヤヨまた笑った。
失礼しちゃうよね?
ほんとなのに。


ちょっとご機嫌傾いてきたよ、あたし。


そしたらヤヨ、
もとい
王子様。

あたしの髪の毛をすくって
まっすぐあたしのこと見るの。


そんな目で、みるのはズルい。


「俺は悪魔が一番すきだよ」


「—――……」


もう、そんな顔されたら
なにも言えないから。


思いっきり背伸びして、
ヤヨの唇にキスをした。


離れてみたらね。

ヤヨ、しっかりほっぺ赤い。
よく見たら、
赤いっていうレベルじゃないよ。


もう、可愛いわんちゃんなのに、
無理して甘い言葉言うから。


子羊で猫ちゃんでわんちゃんで
スッポンで、狼なヤヨちゃん。


あたしの、世界でいちばんの王子様。


王子と悪魔なんて
組み合わせセンスまるでないけどね?


ない相性こすり合わせて、
もう絶対にハッピーエンドきめようね。


王子と悪魔が
末永く結ばれますように。


ね、ヤヨちゃん。



END


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