【完】もっとちょうだい。
「見た目でいってるんじゃないよ」

そうふみくんは笑い飛ばした。

「俺入院したことあるじゃん?」

と、ふみ君が芙祐を指さす。

それに芙祐も、指を差し返す。


「あったあった!」


これは内輪話始まる感じ?


ペットボトルの緑茶を喉に流し込んだ。


「クラスみんなでお見舞いに来てくれたんだよなー」


「そうそう!ふみくん人気ものだったもんね」


「だったなー」


あ、否定しないんだ。


「あの時さぁ」


突然俺に人差し指を向けるふみ君にびくっとした。


「え、何?俺?」

「彼氏から話ふったんだろ。何フェードアウトしてんの」


ぐいぐいっと脇腹をペットボトルでつつかれる。
まじでやめろ。お前たちノリが似てんだよ。


「あの時、クラスのみんなが、流行りだったちっさい立体ブロックとか、ゲームとかパズルもってきてくれたんだけど、俺、手の甲に点滴いれてたからさ」


ここ、と指さす薄い皮膚の下の膨れた血管。
うわ、絶対そんなとこ刺されたら痛いだろ。


口許が引きつりつつ、話を聞く。


「利き手のこんなとこ刺されてたから、あんまり手動かせないし。持ってきてもらったもの全然使えないなって正直思ったんだよね。でも言わなかったけど。ありがとーって受け取ったよ。俺人気者だったし」


さりげなく自慢いれんなよ。


「でも芙祐はそういうの見てんの。翌日芙祐だけちょっと早めに来てさ、俺に開きやすそうな大判の本ばっかり図書館で借りて来てくれて」


あぁ、そういうの、しそう。
めちゃくちゃ芙祐っぽい。


俺は芙祐に視線をずらした。
芙祐は聞いてんのか聞いてないのか判断しにくいぼけっとした顔をしている。


「俺まじ嬉しかったからね。そういう気づかいってなんか、看護師みたいだなって思ったの。俺は」


ふみくんは思い出を抱きしめるみたいにそう言った。


対する芙祐は、ゆっくり首を傾げる。
そして驚いたような声で言った。


「……ぜんっぜん覚えてない!」


言ってやるなよ、そんなこと……。


震えるわ。



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