空色(全242話)
美香と幸成が会ったのは、おとついの昼間。
美香が休んだ初日の日だ。
『ご飯食べて買い物して、まぁ、普通のデートだったのね?』
頬を赤らめて話す美香は、なんだか微笑ましくて可愛かった。
私はそんな美香の話を目を細めながら聞いていた……
『誘ったのは幸成くんだから、私に気があるのかなー、なんて浮かれちゃってたよ』
新作バッグに春物の服。
沢山の買い物をしたらしい。
幸成くんは、美香の大量の荷物を優しく持ってくれたとか。
「俺だって男なんだから、荷物持ちくらいさせて」
とかなんとか言って……
『ヤバイよね、私。 これも気を引くための作戦!?とか思っちゃってさ』
いや、誰だって思うよ。
男が優しくするなんて、そんな理由しかないもの……
『帰りは、幸成くんが車で送ってもらってさ。 今日の御礼を言って別れようと思って彼を見たの』
頬を手で覆い、美香は話を続ける。
『そしたら、頬を触られて、「ちょっと目ぇ閉じてて」なんて…… こんなの普通、キスだと思うじゃん? だから私、それに応えようと』
『って、はぁ!? 美香から何かしたの?』
美香の話を聞いていて、思わず大声が出てしまった。
だって、応えようとって事は……
『で、でも口じゃなかったし』
顔を真っ赤な林檎のように紅潮させ、美香は上目づかいで私を見る。
幸成との別れ際、美香は幸成に言われた通り、目をつむったらしい。
そして顔を近付けた幸成に自分から向かっていったそうだ。
『馬鹿……』
目をつむっていた事で幸い唇から外れたが、馬鹿としか言いようがない。
『超恥ずかしいよ~!! ただアイラインが滲んでただけなんて~……』
ジタバタする美香に、出る言葉はなく、とりあえず溜め息1つ。
安心したような呆れたような。
【ああ見えてセックスには奥手なんですよ?】
あの狼少年め……