空色(全242話)

『いってらっしゃい』

プレイルームの前、
幸成は笑顔で私を見送った。

何なの?
私の全てが欲しいなんて言っておいて、平気な顔で見送るのね。

『いってくる』

理解不能だ。





『ご指名ありがとうございます』

扉の向こうは薄暗い密室。
窓もなく空気穴もなく、息がつまりそうになる。

ベッドに座った人影に近付くと、その姿が段々と見えてくる。

正直、ギョッとした。
薄明かりに浮かぶ男の裸体。

雄を表すシンボルはすでに天を仰いでいた。

あ、有り得ない。
今までこの仕事をしてきて、こんな客に当たった事がない。

『早くしてくれないか? 時間が勿体ない』

勿体ないって……
だったらエロ本でもAVでも見て、自分で擦ってろっての。

ってあれ?
これじゃ私、幸成と一緒じゃん。

『失礼します』

また怒られては堪らない。
さっと男の前にひざまづき、男のモノに舌を這わす。

『……ッ』

慣れてないのか、男はビクッと背中を反らせ床を踏む足に力を込めた。

そうか。
ヘルスも初体験だな。
だから素っ裸で待ってたんだ。

そう気付いてからは、いつ笑い出しても可笑しくない限界ギリギリの所で耐えていた。

あー、可笑しー……





『また来てね~』

男を笑顔で見送り、扉を閉める。

いつも通り、口を濯(ユス)ごうとシャワールームに入った。
と同時、下腹にズンと鈍い痛みが響く。

子宮に重くのしかかるような、そんな痛み。

『来るなぁ』

どうやら生理が近いらしい。
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