空色(全242話)

出会ったばかりの他人との50分が、こんなにも苦痛だと思わなかった。

『テレビでもあると最高なんだけどな』

十和はソファーで頬杖をついて言う。

そう。
ベッドと小さなソファー。

それと玩具の入ったカゴの乗ったガラステーブルだけがある狭い個室。

テレビも本も無い。
出会ったばかりで会話も弾むわけがないし。

暇で仕方ないのだ。

『ねぇ、何で私を指名したの?』

奈美の方が話も上手いし、テクニックもある。
こんな退屈はしなかったはずだよ。

『アユが1番、綺麗だったから。 悪い?』

恥ずかしげもなく出る台詞に、思わず目を見開いてしまう。

綺麗って……
そんな面と向かって言われたの初めて。

『綺麗なのは奈美じゃん。 美香だって、綺麗だし……』

セックスの最中「綺麗だね」と言われるのと少し違う。
何だかくすぐったい。

『俺の好みだから、他は関係ないよ』

十和はそう言って笑う。

変な男……
ここに来てセックスしないなんて、金持ちの戯(タワム)れとしか思えないわ。

『どうでもいいし、そんなの。 それより後、何分?』

『確かにどうでもいいか。 後、35分』

まだ15分しか経っていないか。

あまりの時間の遅さにハァと小さく溜め息をつく。

『そういや俺、携帯ワンセグだった。 テレビ見る?』

それに気付いたのか、そう言って携帯を見せる十和。

早く言えっつの。

差し出された携帯の画面には、野球の特別番組が映っていた。

どこかの球場での試合だろう。
晴れ渡る青空が見える。

『それって、いつの試合?』

『あー、多分昼間の。 市民球場だし』

ピッチャーの後ろは雲1つない真っ青な空。
その青さに目が眩む。

『何? 野球好きなの?』

『……うん、好き』

野球じゃない。
その空が……

真っ白な太陽、雲。
真っ青な空。

そんな空の下に、私も立ちたいと、いつも思ってた。

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