空色(全242話)
テレビを見ていたら、あっという間にタイムリミットが来てしまった。
『また来てね』
お決まりの言葉と笑顔。
でも十和はもう二度と来ないだろうな。
万金(マンガネ)払ってセックス無し。
口ですらされない。
こんな最低なヘルスは他にないだろう。
『んじゃ、またね。 今度は2人で飲もっか』
しかし十和は笑顔で返すと、私の頭をポンポンと撫でた。
『え? また来るの?』
「またね」なんて聞けるとは思わなかった。
私達はお互いの連絡先もフルネームも知らない。
会う術は、唯一ここだけ……
『気が向いたらね』
十和は少し意地悪に笑うと、扉を開けて出ていった。
それを見送った後で私はベッドに腰を下ろす。
男は汚い。
野蛮で乱暴で、鬼畜。
女を主食とし、エサを得るために手段を選ばない。
それが私の知ってる、男という生き物だ。
十和みたいな男、他に知らない……
『お疲れー』
部屋を出て待機室に向かう途中。
美香が肩をポンと叩き、話し掛けてきた。
『どうだった? あのイケメンくん』
少し楽しそうにも見える。
『別に、他と変わんないよ』
『もっと他に感想あるでしょ~? 上手いとか下手とか』
上手いも下手もない。
何も無かったのだから……
だけど何も無いなんて言えないし。
誰が何処で聞いているかわかんないから。
ここは、それ目的以外の客を許さない所なのだから……
『アユちゃーん、指名入ったよー!』
待機室の前に着き、扉を手に掛けた途端に、受付けから呼び出しがかかる。
本日、2人目のお客さま。
『アユ、人気者だね?』
美香はそう言って笑うと、私を残し部屋へ入っていった。