空色(全242話)
【ねぇ君。 うちで働かない?】
きっかけはたった一言だった。
【君なら驚く程、稼げるよ】
悪魔の囁き……
でも数時間後、私が見たのは地獄絵図だった。
【何これッ 話が違うじゃん!!】
男の股ぐらを貪る女達。
白濁(ハクダク)の液体を顔面にかけられ喜ぶ人もいる。
室内は生臭い匂いが充満して、先程出されたコーヒーを吐いてしまいそうな程だった。
【さぁ、テストだ。 君の技術を見せてくれ】
頭が狂ってるとしか言いようのない世界。
ここにいる全員、相当の気違いだ。
働いている私も、今となれば気違いだろう……
『……ユ。 アユ?』
『……あ……』
『大丈夫? ボーっとしてた』
流石に3本目のビールはきつかったのか。
十和は私の顔を心配そうに覗き込んだ。
『……すぐに覚めるよ。 私、強いから』
そんな十和を直視できなくて、パッと右に視線を反らす。
『やっぱ女の子だよねー。 ガブガブいけない所なんかさ』
女の子?
この店に「女の子」は1人もいない。
皆、「男」を餌にする「獣」だ。
『あんたの言い方、カンに障る。 いつも上から目線で』
私だって可愛い女の子じゃない。
男の出す金を餌にする、ただの獣。
『だって俺、アユより年上だもん。 3つ位ね』
3つって事は、23くらいか。
って……
『何で知ってんの? 私の歳』
『カウンターで聞いた。 駄目だった?』
駄目じゃないけど。
十和がそんな事を知りたがる理由が気になった。
誰でも良かったくせに。
自分に無関心なら誰でも。
そう言ったくせに。
『だって気分悪いじゃん。 私の知らない所で私の話されるの』
『悪かったって! これからはアユの了解得るからさ』
そしてまた無邪気に笑う。
何だか振り回されているようで、悔しいわ……