空色(全242話)
『もー、空っぽー』
カーンと音をたて、十和の投げた空き缶は袋を避け、シャワー室の床に落ちた。
これで5本目。
『強いんだ? お酒』
『まぁねー。 つまんない奴っしょ?』
『別に?』
酔っ払いは好きじゃない。
しつこくて、常識がない。
酔っ払い相手に何度、嫌な思いをしたか、
多すぎて数え切れない。
『そろそろ時間だよね。 シャワー借りていい?』
『え? あ、うん』
十和の言葉に思わず戸惑ってしまったけど、
よく考えたらここは、風俗店。
私は風俗嬢。
シャワーを浴びてセックスをする。
それが当たり前だ。
十和だって、ここが何処だか、解って来ているのだから……
『じゃあ私は、ベッドで待ってるからね』
十和にそう言い残し、私はシャワー室を後にした。
ベッドに戻り、上着を脱ぐ。
肌の透けるベビードールは少し肌寒かった。
と同時、目頭が熱くなる。
『やっぱ、するんだ……』
もう馴れたはずよ?
何回でもしてきたじゃない。
何人も、相手してきたじゃない。
今更もう戻れないの。
でも……
「無理してやるもんじゃない」
あの言葉を一度は、信じてしまったから。
信じた私が馬鹿だけど、信じた分だけ、余計に辛い。
十和に抱かれたら、私は獣にならなきゃいけない。
十和を餌にして、働かなきゃいけない。
私……
十和とは、したくないよ……