空色(全242話)
『うっわ、何つー格好してんの』
体育座りで顔を膝に伏せる私に、シャワー室から出てきた十和は驚いたように言う。
『何って…… ベビードールだけど。 可愛い?』
何もなかったふりで、そう答える私にフゥと、溜め息ひとつ。
『可愛いけどさー…… 目のやり場に困る』
『え……?』
『早く上着着なよ』
意味も解らぬまま上着を渡されたので、とりあえず袖を通す。
あ、手が……
震えてる。
『何人も相手してるのに……』
何を今さら恐がってるんだろう。
客は若い方がいい。
かっこいい方がいい。
十和なら、大当りって喜んでもいいはずなのに……
『アユが俺としたくないと思ったなら、俺は嬉しい』
……嬉しい?
『客だと思われる方が辛いよ』
何を言ってるのよ。
男なら、ショック受けるとこよ?
それを嬉しいなんて……
『んじゃ、俺は帰るね』
え?
帰るって……
『エッチは?』
『あのねぇ、ちゃんと聞いてた?』
『だって……』
『俺は、アユと話しに来たって言ったじゃん』
そうだけど、
そう思ってたけど、
シャワーなんて浴びるから……
『あ、アユもシャワー浴びておきなよ? シャワー室にずっといて、タオル使ってないの不自然だから』
十和はボソッとカメラに届かないくらいの小声で言うと、鞄と上着を手に取った。
まさか、カモフラージュのためにシャワーを?
私が咎(トガ)められないように?
『あ……ありがとう』
なんて男なの?
こんな私のために……
『どういたしまして』
何だか、胸の奥が暖かい気がするよ。