空色(全242話)
シャー……
髪と体を濡らすためのシャワーが、無駄に流れてゆく。
私はマットに体育座り。
膝に額を着けて目を閉じた。
【話しに来た】
十和の言葉が消えない。
一体、何の為に来たのだろう。
本当に話すためだけに?
そのためだけに金を払ってまで?
理解できない。
あの男だけは。
今まで出会った男達の誰とも違う男(ヒト)。
十和……
『おつかれー、アユ!』
休憩室に行くと、美香が立ち上がって声を掛けてきた。
私はそんな美香を見てホッとしたように笑みを見せる。
こんなに心許せるのは美香だけだ。
まだ出会って少ししか経っていないけど、ずっと一緒に生きてきたみたいに安心する。
『アユ凄いじゃん! あの若いのに気に入られたなんて!』
美香は私の髪をクシャクシャと撫でると、嬉しそうに笑う。
まるで自分の事のように……
『気に入られたわけじゃ……』
まだ半渇きの髪はグチャグチャになったまま。
手グシで直しながら、そう答えた。
『だってリピしてんだよ? 絶対また来るって! やっぱアユ、可愛いもんねー』
ケタケタと笑う美香に私もつい、笑みを漏らしてしまう。
今まで友達なんていなかった。
中学時代、「売春少女」と噂だった私は人から白い目しか向けられなかった。
皆、腐った物を見るかのような眼差し。
高校生になっても噂はついてきた。
私が腐ってるのか、世の中が腐ってるのか……
よく解らないし、何だか馬鹿馬鹿しくて全て捨ててしまった。
今あるのはココで稼いだ金と美香という親友だけ。
後は何も無い。
『それよりさー、帰りにうちでご飯食べていかない? アユの話じっくり聞きたいし!』
『いいよ。 コンビニ寄っていこうね』
でもそれが不幸だとは思わない。
「0」が「2」になった。
幸せな事だもの。