空色(全242話)

『お疲れ様でしたー』

深夜1時。
美香と荷物を持って店を出る。

0時まで営業の風俗店達。
周りのお店も電気を落とし、路地が少し暗く感じた。

『さっむーい!』

昼間は平気でも深夜はもう真冬のよう。
美香は声を上げて両腕を摩(サス)る。

『おでん買ってこうよ。 暖かいもの食べたいし』

私も肌寒さに耐えられず長袖Tシャツの手元を伸ばし、手を隠した。

『おでんかぁ。 私、ガンモ好きなんだ。ってババくさい?』

少しバツの悪そうに笑った美香に、私も笑顔で頷いてみせる。

『でも美味しいよねガンモ。 私、シラタキも好きだよ?』

『あは、アユも結構ババくさいよ』

他愛のない話が楽しい。
一緒にいるだけで嬉しい。

私は美香が1番好き。
他の誰よりも……


『ッんのクソ女(アマ)が!!』

と突然、私達の耳に低く大きな怒鳴り声が響く。

『アユ、今の声……聞いた事ない?』

美香は小さな声で言うと、私の顔を見た。

確かに聞き覚えのある声。

何処だ?
何処で聞いた?

『アユ、こっち』

美香は私の腕を掴み、路地裏に身を潜めた。

しゃがみ込み声のする方をブロック塀(ベイ)に隠れて見る。

そこには、信じられない光景があった。

『早苗……』

あの日逃げた早苗。
その彼女が黒服の男達に両腕を掴まれ、無理矢理に歩かされていたのだ。

『これくらいでくたばってんじゃねーぞゴラァ!?』

『も、許して……ッ』

『何言ってやがる! お前を捜すためにいくら使ったと思ってんだ! テメーが働いて返すんだよ!』

聞いた事あるはずた。
あれはうちの店の男達。
主に送迎を係としていた奴らだ。

私も、送ってもらった事がある。

『おら行くぞ! 次は24時間の店行くからな。 朝まで稼いでくるんだ』

男は早苗の尻を蹴ると、不気味に笑う。

話の内容は正確には解らない。
だけど早苗が無理矢理に働かされているのは解った。

『ヤバイよ。 あいつらマジでいかれてる』

震えた声を発する美香。

私も上手く答える事が出来なかった。
恐怖のあまり、唇の震えが止まらなかったからだ……
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