空色(全242話)

笑顔は人を幸せにする。
十和はそう言って笑った。

私も心から笑いたい。
青空の下で、満面の笑みを……

到底、叶わぬ夢を頭の中に描く。
思って、願って……
少し涙が出そうになった。


『じゃーん、今日はお菓子だよ!』

シャワー室のマットの上、十和はスナック菓子やチョコレートを並べた。

『あ、これ。 新発売の?』

私の目に止まったのは最近よくCMで見るチョコレート。

『お目が高いねー。 それから食べよっか』

チョコレートを手に取り、包装を解く。
甘い香りが部屋に広がった。

『私、あまりお菓子とか食べないの』

『そうなの? 嫌い?』

『ううん。 太るし、肌荒れしそうだから』

前はすごく好きだった。
食べなくなったのはBabyDollに入ってから。

「綺麗でいなければ稼げない」
そんな世界だから、大好きなお菓子を絶(タ)った。

『太ったっていーじゃん』

『とか言いながら、男って細い子を選ぶんだよねー』

ポツリと呟いた言葉に十和は目を丸くする。

その反応で自分の言った事に気付かされた。
私、つい本音を……

まるで友達のように話してしまってる。

十和はお客様。
こんな対応じゃいけないのに。

『あ、あの』

弁解しようとした、その時。
十和はケタケタと笑いだした。

『今のすっげーいい。 アユでも男ウケとか気にすんだ?』

あれ?
笑ってる……?

『じゃあさー、太って指名がなくなったら俺が指名するよ』

『え?』

『アユが店にいる時間を、全部買ってあげる』

優しい笑顔。
十和は私にひとカケラのチョコを差し出す。

甘い匂いに釣られ口を開けると、十和の長い指が唇に触れた。
同時にチョコレートの甘さが口いっぱいに広がる。

『美味しい』

太って、醜くなって、
それでも貴方は傍にいてくれる?

私を捨てないでくれる?

『ね? 我慢しなくていいんだよ?』

馬鹿みたいね。
そんなの無理に決まってるのに……
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